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労福協 活動レポート

2015年8月6日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第2号)

元参議院議員 峰崎 直樹

猛烈な暑さが日本列島を覆っている。北海道も例外ではなく、35度を超す真夏日に襲われる地域も出始めている。もっとも、さすがに朝晩は比較的涼しく、本州に比べてましではある。

『文芸春秋』8月号、翁邦雄論文「黒田日銀総裁、あなたは間違っている」の指摘に納得

さて、アベノミクスの第一の矢である超金融緩和政策について診てきたのだが、ちょうど月刊誌『文芸春秋』8月号に、かつて日銀きっての理論家と言われた翁邦雄京大教授が「黒田日銀総裁、あなたは間違っている」という論文を寄稿されている。中身は、小生がこの間2号で指摘していることとほぼ同じ内容になっており、特にインフレ率が高まればいずれ「出口戦略」である「緩和の修正が避けられない」のだが、肝腎の「出口戦略」については、次期尚早として口を噤んでいることを厳しく批判されている。翁教授の批判はその通りであり、日銀はそのことに対してきちんとした責任ある態度を明確にすべき時が近づいているようだ。

日銀の抱える債券価格下落リスク、誰が責任を取るのか

この問題は、国民にとって大変重要な問題を含んでいる。かつて住専の問題から大手銀行の不良債権問題解決に向けて実に30兆円もの公的資金(税金)が投入され、内約10兆円は直接長銀や日債銀など破たんした金融機関につぎ込まれ、それはそのまま回収できなかったのだが、都市銀行大手を中心に約97兆円もの不良債権を、無税償却によって解消し、ようやく不良債権問題の罠から脱却できたのだ。問題は、約100兆円もの不良債権の40%(法人税率分)が繰り延べ税金資産として利益から法人税を支払わなくても良くなったわけで、合わせて約50兆円近い税金が大手金融機関に実質供与されたことになったのだ。そのことは、つい最近まで大手銀行は、利益を出しても法人税を支払わなかったことへの国民の不満が出ており、この50兆円もの大変な金額は誰が責任を取ってくれるたのか、全く不明なのだ。議会制民主主義の建前からすれば、政治責任と言うことになろうが、国民は誰もそのことをよく知らないまま今日に至っているのだ。

同じ問題は、今回の日銀の異次元の金融緩和政策による日銀が抱えるであろう巨額の赤字リスクをどうするのか、という事にかかってくる。現時点では大量に発行している国債の利率は10年物で0,5%を切るところにまで落ち込んでいるが、消費者物価が2%に達するに至れば0,5%と言った水準では収まらず、2%を超すことすら在り得ると見られている。現に政府が7月末に策定した2020年までの経済見通しに於いては、15~20年度までの6年間の金利見通しは2,4%と同じ時期の実質成長率よりも0,9%低くなっているが、それでも日銀が抱え込み続けている長期国債の価格は下落する(利率は上昇する)。その価格下落したリスク部分は、誰が補填していくのだろうか。金額も、もし仮に300兆円を持っていて、0,5%の額面の表面利率が2,5%へと2%以上上昇すれば、機械的に計算しただけでも6兆円の損失リスクを抱えることになるだろう。このリスクは、誰が負担をすべきものなのだろうか。今後、今の勢いで買い続けていけば、GDPの100%、500兆円まで買い進むこともありうるかもしれない。その時抱えるリスクはどれほどの金額になるのだろうか。もちろん、このリスクは日銀の国庫納付金の削減となって、国民生活に大きな影響をもたらすことになる。

内外からの異次元金融緩和策への批判が出始めてきたようだ
今後の日銀の政策論議に注目したい

こんな思いで最近の新聞記事をながめていたところ、8月3日IMFが個人的見解として発表した論文の中で、異次元緩和は技術的要因もあり、早晩限界が来ると問題点の指摘がされ始めている。さらに、肝腎の日銀の中にすら懸念する声が出始めてきたという。6月18~19日の金融政策決定会合要旨の中で「(異次元緩和の)追加的効果を副作用がすでに上回っている」との発言が飛び出している。まさに、黒田日銀は今後どのように金融政策を展開していくべきなのか、大きな転機に差し掛かっているようだ。
次回からは、第二の矢である財政政策に移って行きたい。(8月6日)

(続く)


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