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労福協 活動レポート

2015年11月25日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第12号)

元参議院議員 峰崎 直樹

何とも珍妙極まる自公間の消費税軽減税率のやり取り

再び消費税の問題から始めたい。とにかく、自民党と公明党の間で交わされている消費税の軽減税率問題の混乱状況には、あきれ返ってしまう。どうやら、自民党は税額4,000億円以内に軽減税率の範囲を抑えようとしており、生鮮食料品までとし、加工食品は要れないようにする意向を示しているのに対して、公明党は出来るだけ範囲を広げ、アルコールを除く食料品としていきたいし、加工食品は当然軽減税率の対象にしようと言っているようだ。そこで報道によれば、何と牛のひき肉や豚のひき肉は生鮮食料なのだが、牛と豚の合挽きは加工食品になるとの、実に珍妙な論議が展開されているようだ。こんな調子でいけば、生鮮食料とは何なのかを巡って延々と議論が展開し、何時まで経っても解決に至らなくなるのではないか、と思えてくる。実にばかばかしい限りであるが、これが今の現実であることに変わりはない。

食料品の次の軽減税率予備軍が次々に押し寄せてくるぞ

問題は、食料品を巡って何を軽減税率にするのか、という事で終わりにならない事だ。おそらく、これからは毎年の予算を組み立てる時には税制が大きな問題になり、消費税の軽減税率に加えて欲しい業界が次から次へと提言してくることは必至だ。すでに、新聞業界が名乗りを上げているし、おそらく製薬業界なども人間の命に係わるとして軽減税率を求めてくるに違いない。諸外国を見ても、例えばカナダではドーナツが5個までは普通税率だが、6個以上になると軽減税率にカウントされる。その為、ドーナツ屋さんの前で6個以上買って軽減税率にしてから分け合う姿が一般的になっているという。フランスでは、トリフとフォアグラは軽減税率だが、世界三大珍味のひとつであるキャビアは普通税率だという。国産材優遇なのだろうが、同じ世界「珍」味の扱いについて何とも「珍」妙な気がしてならない。

最後は安倍総理が登場して珍妙な軽減税率騒動に決着か(!?)

この軽減税率問題については、税制調査会長レベルでは埒が開かないと見えて、両党の幹事長レベルの論議にまで持ち込んだそうだが、ここでも解決できなかったようだ。まさか、合挽きがダメで豚挽きや牛挽きが良いといった決断を、安倍総理と山口代表との間の会談で最終決着になるのではないと思うのだが、土台そんなレベルの問題すら税制調査会で決着が付けられないような低レベルに落ち込んでしまっているのかもしれない。情けない話ではある。

法人税の引き下げは、一体何のためだったのか

次は、法人税率の引き下げ問題である。安倍政権は、法人税率の引き下げを強硬に主張し、30%を切るレベルにまで引き裂ける方向を打ち出してきた。その目標には、税率を引き下げることによって企業利潤を手厚くすることが、設備投資を促し雇用の拡大にもつながるし、利潤の一部を労働者の賃上げの財源に回すこともできる、と思っていたのだ。

使い道の無いお金は、再びバブルの資金になるのでは

ところがどっこい、企業は急激な円安によって生まれた利益が急増したものの、内部留保が増えるだけで一向に設備投資や働く労働者への賃上げとなって来ないのだ。これに腹を立てた政府首脳は、内部留保に課税をするぞ、と脅しをかけようとし始めている。何のための法人税減税なのか、これでは全く意味の無いものになっているのだ。土台、今日の日本経済は、企業が輸出を通じて得た利益を設備投資に回して雇用を拡大し、労働者の雇用や賃上げに回すなどと政府が考えていること自体、全く経済の現実を理解していない証拠なのだ。もし、設備投資をするにしても、賃金水準の高い日本などでするはずはなく、積極的に海外に設備投資をしているのが現実である。あるいは、内部の利益が拡大してくれば、利益が見込まれる分野としてモノ造りよりも金融の世界に手を出し、特に日銀の金融緩和の下で進められてきた株価の上昇に眼をつけ、再び金融バブルになる危険性が高まることも十分に予想されよう。安倍政権は、ことのほか株価に対して敏感で、時には政治介入ではないかと疑わざるを得なくなることもしばしばであった。そのことは、政治として大問題である。

法人税の引き下げ競争、先進国だけでも辞めるべきではないか

今必要なことは、こうした法人の行動を前にしたとき、法人税の引き下げによって使い道に困ってしまうような内部利潤の拡大を進めることではなく、むしろ利益に対して確りと法人税を負担してもらい、国民が求めている社会保障や教育の充実に向けた財源の充実にあてていくべきであろう。ただでさえ、日本の財政は火の車なのであり、法人税減税に向けて兆円単位の減税を振る舞う余裕は全くないのであり、貧困にあえいでいる母子家庭や低所得層に対する給付措置に回す方が重要であることは言うまでもあるまい。世界的に法人税の引き下げ競争が進められているが、今こそ先進国だけでも税の引き下げ競争を辞めるよう提言していくべき時ではないか。

ようやく最低賃金底上げに眼をつけた安倍政権、果たして本気?

そんなことを書いていたら、23日付の日本経済新聞には「政府、最低賃金『毎年3%増』GDP600兆円へ目標」と言う見出しが目に付いた。24日の経済財政諮問会議にかけ、「20年ごろに時給1,000円を目指す」との方向だという。ちなみに、今年最低賃金は18円上がって798円になったばかりで、これでも過去最大の18円と言う上げ幅だそうだ。世界的には、アメリカやEUなどでは時給は日本円にして1,000円を軽く超えているようで、ようやく政府が自分の手で実現できる目標を打ち出したと言えよう。つまり、労使間で賃上げを決めるべきことに、政府が介入しても成果は出てこないのだ。とはいえ、1,000円まで、現状の最賃からは200円以上あるわけで、果たしてあと4年で1,000円に到達するには18円どころか三桁の引き上げが不可欠である。果たして、安倍政権が最低賃金の大幅な引き上げを実現できるかどうか、単なるアドバルーン以上にモノにならないよう野党側は確りと国会で追及して欲しいものだ。

(続く)


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