2016年1月27日
独言居士の戯言(第17号)
元参議院議員 峰崎 直樹
世界大富豪62人の資産額合計=世界人口の半分36億人の資産額
世界の富豪62人の資産保有額が、世界の人口約72億人の半分36億人の合計資産額と同じ、という推計結果が報道され注目されている。オックスファムという貧困問題に取り組むNGOで、世界の主要な経済界や政治家などが集まるダボス会議の前に公表し、貧困・格差問題の解決に前向きになるよう参加者に訴えたものだ。
もう少し細かく見てみると、オックスファムは2014年からこの報告を公表しており、昨年報告された2014年時点では、世界の上位1%が世界の富の48%を所有し、今年は15年時点で過半数を超えたことは確実と推計している。間違いなく格差が拡大している。
この点は、昨年日本でも一大ブームとなったフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』でも明らかにされていたのだが、改めて富裕層の資産の増大が急速に進んでいることを訴えている。ちなみに、上位1%とは純資産で75万9900ドル、約8901万円以上が該当するとされている。また、上位10%は6万8800ドル、約806万円以上になるとされている。日本でも、地価が高い都市部などでは、土地付きの戸建て住宅を所有する普通の方たちは10%層に入りそうだし、大企業の役員層はその中に当然含まれるようだ。
問題はタックスヘイブンによる税逃れ、超富豪で約890兆円も
問題は、最初に指摘した超富豪層である。オックスファムはこの超富豪層が資産を拡大させるためにタックスヘイブンを利用していることを上げ、租税回避を辞めさせる必要性があることを強く指摘している。単に超富豪層だけでなく多国籍企業も加わっていることも指摘する。その超富豪層がタックスヘイブンに置いている金額は、なんとある推計では7,6兆ドル、約890兆円にも達する巨額なものになっているという。
世界での脱税額は毎年22兆円、アフリカでも1兆6400億円にも
オックスファムの報告書には「貧困と不平等に取り組むために必要な、貴重な資金を政府から奪っている」とし、各国政府に本来支払うべき税金は毎年1900億ドル、日本円で約22兆円にも達する脱税額なのだ。さらに、貧困率の高いアフリカ全体の金融資産の3割もが、タックスヘイブンにおかれていると見積もられており、その結果毎年140億ドル、約1,64兆円の税収が失われていると推計されているのだ。貧困に悩むアフリカ諸国にもかかわらず、多くの一部富裕者たちがタックスヘイブンを利用して自らの利権を隠匿していることが指摘されており、対外援助の在り方にもタックスヘイブン問題の解決が求められているのだ。
世界は脱税阻止に全力を挙げるべきだ、特に米・英両国は努力を
それにしても、このような状態を放置している現実を変えていくためには、先進国が一致協力して事に当たらなければならない。その為に、OECDに加盟している先進国各国はBEPSという組織を作って税逃れを防ぐための15の方策を打ち出してはいるのだが、関係各国は努力義務はあっても罰則などは極めて弱く、なかなかその解決に向けた動きは遅々として進んでいない。
それどころか、タックスヘイブンとは、カリブ海や大西洋に浮かぶヤシの木の生い茂る南の島、というイメージが強いのだが、実はイギリスのロンドン・シティやアメリカのデラウエア州といったところがタックスヘイブンに結び付いており、そのためアメリカやイギリスといった国々では、なかなかタックスヘイブン対策に本腰が入らなくなっているのが現実である。アメリカやイギリスが、本気でタックスヘイブンを無くして行けるような状況をどのように作っていけるのか、世界の英知を集めていく必要があることは間違いない。何とかしたいものだ。
(続く)