2016年3月15日
独言居士の戯言(第21号)
元参議院議員 峰崎 直樹
アメリカ大統領選挙と長者番付、トップは3年連続ビルゲイツ氏
世界の長者番付については、当然のことながら公的なものはない。民間のNGOなどが推計して、世界のたったの62人が、世界人口の半分36億人と同じ資産を保有していると推計したのも、オックスファムという民間団体であった。つい先日、日経新聞に掲載されていた米経済雑誌『フォーブス』が、3月1日に発表した2016年版の世界長者番付を発表している。フォーブスが、一番この種の統計で取り上げられることが多いようだ。今のところ、どの程度の正確さを持つのか別にして、この発表が一番人口に膾炙されていると見ていいし、時系列でも追いかけることが出来そうだ。
今年のトップはやはりマイクロソフト社の創業者ビルゲイツ氏で、保有資産額750億ドル(約8兆5千億円)で、3年連続首位をキープしている。日本人では、ベストテンには誰も入っていないが、100位以内では、57位にファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏146億ドル、82位には孫正義ソフトバンクグループ社長の117億ドルと言うところのようである。アメリカは圧倒的に超大富豪が多く、この結果は格差社会の象徴と言えるのだろう。
ダニエル・シェルマン著『コーク一族』(講談社)に見る超富豪の生態
そうした中で、ベストテンの9位にチャールズ・コーク(396億ドル)、デビッド・コーク(396億ドル)が並んでいるのが目に付いた。というのも、最近ダニエル・シェルマン著『コーク一族』(講談社)を読み終え、アメリカの大富豪がどのようにして生まれ、一族がどのようにしてそれを継承させ、今日に至っているのか、一族間の訴訟問題も含めすさまじい生き方などに驚嘆させられたのが強く印象に残っていたからである。
というのも、アメリカの共和党の理念である「小さな政府」「市場原理主義」を熱心に推進し、そうしたリバータリアンに基づく理念や政策を、大学から初めてシンクタンクさらにはティーパーティといった運動への資金提供など、すさまじい運動を展開してきたことに注目させられたからなのだ。リチャード・コークなどは、そうした共和党の大統領選挙に財力に物を言わせて介入し、過去2回の大統領選挙でオバマへの対抗心をむき出しにした姿が生き生きと描かれている。
アメリカの資本主義的民主主義、超富裕層の運動組織化の凄さ
特に感心させられたのは、こうした運動の組織化のやり方であり、リバータリアンの考え方をどのように広げ、運動化していくのかを敗北の経験から学び続けている事だろう。と同時に、お金の力がアメリカの政治においていかに大きな力になっているのか、まさに「資本主義的民主主義」の赤裸々な事実を知ることができる。今の、アメリカ大統領選戦でトランプ旋風が吹き荒れているのだが、コーク一族の名前は出てきていない。おそらく、本物のリバータリアン政治家がいないことに切歯扼腕しているに違いない。これから、アメリカの政治・経済がどう展開していくのか、コーク一族をはじめとする富豪層はどんな運動を展開していくのか、注目し続けて行きたい。
(続く)