2016年5月6日
独言居士の戯言(第24号)
元参議院議員 峰崎 直樹
子供の日に思う、少子高齢化に悩む日本と隣国韓国、やがて中国
ゴールデンウイークも終盤、5日はこどもの日で少子化問題が焦点にあたることが多く、どうしたら出生率の改善ができるのか、いろいろと問題が指摘されている。そうした中で、日本以上に深刻になりつつあるのがお隣の韓国であり、合計特殊出生率は2005年には1,08と世界一低い水準にまで低下、今でも1,2前後で推移している。結婚して、二人の子供を産もうというキャンペーンを繰り広げているものの、日本同様保育事情は良くなさそうだ。5日付の朝日新聞「人口減日本、海外から考える」が指摘しているように、経済的な負担などから結婚や出産に至らない人が少なくないという。ちなみに、13億の民を抱える経済大国になった中国も、「一人っ子政策」のもたらした結果、やがては少子高齢化に悩まされるのは必至だろう。
韓国では、非正規労働者の比率が3人に2人という厳しさ
日本と同様、雇用における規制緩和が進められ、非正規雇用が3人に2人という実態にあり、大企業や公営企業、官公庁などで働く一部の人を除き、雇用格差問題が深刻になっているようだ。例え正社員でも将来の保障があるわけでは無く、高い住宅費や子供にかかる教育費の負担も重くのしかかっていると報じられている。日本が抱えている問題以上に、深刻な実態が浮かび上がってくる。日本でも大学への進学では医学部の人気が高いのだが、韓国でも日本以上に医学部への進学熱が高いようだ。それだけ、安定した職業として医者が羨望の的になっているのだろう。果たして、医者としての適性があるのかどうか、疑わしくなってくるのだが、杞憂だろうか。人材の適正配分の問題としても、真剣に考えて行くべき課題なのかもしれない。
必要な課題は明白、雇用の安定と社会保障・教育の充実
こうした少子化はどうしたら歯止めをかけることができるのだろうか。このまま少子化が進めば、社会がどんどん衰退して維持できなくなる危険性が増すことは必至だ。一刻も早く、雇用の安定と社会保障の充実、教育予算の拡大による人的資本の充実を図る必要があることは、日本も韓国も同じではなかろうか。
韓国も日本も国民負担率が低すぎる、特に日本は租税負担率が問題
問題は、必要な財源なのだが、日本はOECDという先進国の中でGDPに占める税と社会保険料を拠出している割合が少ないことが指摘されてきた。最新の情報では2012年度30,1%で、フランス(46,2%)やデンマーク(47,6%)などと比較すれば一目瞭然である。特に日本は高齢比率が25%を超えて世界一であることを考慮しなければならない。ところが、お隣の韓国はそれよりもまだ低く26,2%でしかない。韓国の事情には通じていないので、なぜこうなっているのか十分に説明できないのだが、日本は社会保険料負担比率は17,4%とまずまずだが、租税負担は23,2%と先進国で低い方から3番目でしかなく、税制調達力が実に貧弱である。そのことが、税だけに頼っている福祉や教育予算の貧困さに表れていることを示している。逆に言えば、公的保険制度で運営している年金・医療・介護・雇用・労災の「それなりの安定性」に繋がっているとも言えよう。
安倍政権は、またもや消費税率の引き上げを延期するつもりか
消費税の5%から10%への引き上げが、法的には2013年8月の三党合意で決まっていた。ようやく2014年4月から、8%への引き上げは何とか実現したものの、2015年10月からの引き上げは延期されてしまった。その際安倍総理は、2017年4月からは確実に引き上げると明言したにもかかわらず、どうも来年4月に8%から10%への引き上げは見送られる公算が強まっていると報じられている。若し引き上げが出来ないようなら、今の政権が続いて行けば、増税は事実上できなくなる公算が大きい。
とにかく、必要なのは財源だ。経済政策の大転換をすすめ、サプライサイド重視から、ディマンドサイド重視へ舵を切れ。
逆進性と言う問題がある消費税の引き上げではなく、所得税や法人税、更には資産課税等であっても財源さえ確保されれば良いのだが、それぞれ消費税以上に反発が出てくることは必至だ。法人税などは、経済界が削減を求め続けてきたもので、今や30%を切るまで下げられてしまっている。その減税分による利益の増加が、新たな設備投資や従業員の賃上げに回ればまだしも、内部留保に回ったり海外への資本投下に回っていて、日本の安定した雇用には結びついていないのが現実だ。
そろそろ経済界の方たちも、1980年代から強められたサプライサイド重視の経済政策で行けば、格差が拡大すると同時に雇用が不安定化し、結婚もできないし子供が欲しいのに生むことができない日本になってしまい、やがては国力が衰退してしまう事への懸念を感じ取る時期に来ているのではないか。その為にこれまでの経済政策を大転換させ、ディマンドサイドの経済に立脚し、雇用の安定化に向けた努力と共に、働く労働者の労働条件の引き上げをすすめ、雇用する側も「応分の負担」をするべき時だと思われる。
こどもの日にちなみ、そんなことを考えさせられる今日この頃である。
(続く)